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ダブルスラッシュに関連した雑記


by kozai22
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読書感想:「知られざる通信戦争の真実」

 通信業界をテーマにした本は数多く出版されており、素人の私ですら「読む価値が無い」と思われるような本もあるが、今回とりあげる知られざる通信戦争の真実は、ここ最近の通信業界の動きが良くまとまっており、「通信業界」の入門書として非常に良くできている。

 話の中心はADSLとIP電話で通信の「価格破壊」を起こした「ソフトバンク」だ。前半はYahoo!BBとIP電話を使いソフトバンクの躍進と、不良資産と法律に縛られ苦しむNTTの姿を書いている。前半部分を読めば、今まで下がらなかった通話料金がなぜ急激に下がったのか?ADSLの急速なバージョンアップはどうして行われたのか?なぜNTTはこれほどまでに「光」にこだわり続けてきたのか?かがわかると思う。個人的には「ADSLは情報収集に有効だが、エンド・ツー・エンドの情報交換型には不向きなのでADSLから光ファイバへの移行が必要」とするNTTと「自分の小皺を世界に向けて発信するユーザなどいない」とするソフトバンク側の意見の違いが興味深かった。

 後半部分は携帯電話とVPNなどについて解説している。特に携帯電話については、ドコモの不調とauの躍進についての記述がある。その中で「ドコモのブランドは安心感にすばない」とバッサリ切っているのは少々乱暴のような気もするが、現状のドコモの不調を理解するには非常に参考になると思う。

 固定網から携帯電話、企業ネットまでわかりやすく解説されているほか、TD-CDMAやauの「win」と最新の話題にも触れており、非常に良い本だと思うが、通信業界の動きは非常に早い、昨日もイー・アクセスがTD-SCDMA(MC)方式の無線通信システムを2年後を目処にスタートさせることや、本書でも取り上げられていたモバイル・セントレックスをKDDIが始めるなど大きな動きがあった。もし購入を検討されている方がいるのなら早めに購入されて方が良いだろう。

 また、本書は通信業界を「解説」しているだけであって、最終的にどうなる?といった結論は出していない。現状では通信のプロでも今後どのようになるか、なかなか見えてこない所もあるのだろう。もっとも、無責任な結末だけを用意している「決めつけ本」を読むよりも、本書を読む方が正確な通信業界の未来が見えてくると思う。
by kozai22 | 2004-02-06 21:11 |