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ダブルスラッシュに関連した雑記


by kozai22
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帯域制限の「軽減」はP2Pで

 「コモンズの悲劇」という言葉がある。これはそれぞれが適度に限度を守って共有地の資源を利用している場合には問題は無いが、1人が抜け駆けをして他の人よりも多くの資源を利用し始めると、他の人間も同じことをやってしまい、資源を枯渇させてしまう事を表す言葉だ。

 P2P技術を使ったファイル交換ソフトによる帯域の問題は、この言葉に表されていると思う。他のISPに先がけて帯域制限を「公表」した、ぷららの発表によると「ごく一部のぷららユーザーが起動しているWinnyやWin-MXに対する外部からのダウンロード要求が、ぷらら全体の上りトラフィックの約50~70%を占めて」いたという、このことからも一部のユーザが帯域を枯渇させている状況がわかると思う。

 この発表以後、いくつかのISPが帯域制限を発表した。それらはWinMXやWinnyなどのファィル交換をターゲットとしたものが多かったが、最近ではファイル交換だけでなく送信トラフィック全体を制限するISPも登場してはきている。これは私の個人的な考えだが、今後はファイル交換ツールをターゲットとするよりも「送信トラフィック全体」を制限する方向に向かっていくと思う。なぜならばファイル交換ソフトは無数に存在し、特定のファイル交換ソフトを制限しても次々と新しいファイル交換に対応しなければならない。ご存じの通り、ファイル交換ソフトはWinMXやWinnyだけでなくいくつものファイル交換ソフトがある。

 しかし、トラフィック全体を制限されてしまうと困ったことが起こる。それは、合法的なコンテンツやサービスまで制限されてしまうということだ。ADSLや光ファイバの普及によりネットラジオ/テレビを個人で運営しているユーザが増えてきており、中にはかなりの人気を集めているネットラジオ/テレビもある。もしISPが送信トラフィックの制限を行えばネットラジオ/テレビを個人で運営している人達にとっては非常に大きな問題になる。

 本来は違法なファイル交換をやっている「一部」のユーザと合法的なコンテンツを配信しているユーザは別々に考えるべきであろうが、仮に帯域制限の流れが「ファイル交換ソフト」から「送信トラフィク全体」になった場合には、合法的なコンテンツ配信を行うユーザにかなりの負担がかかるようになるだろう。

 このような問題を「軽減」させる方法としては、peercastのようなP2P技術を利用したストリーミング配信アプリケーションが役立てるとだろう。従来では、ネットラジオ/テレビを配信するのには1つのサーバから接続している全てのユーザのパソコンに配信するために、太い回線と相当な量の送信トラフィックが発生していた。しかし、peercastのようなP2Pを利用したコンテンツ配信を利用すれば、コンテンツを視聴しているユーザが他のユーザに配信してくれる。

 もちろんこの方法を使えば、本来ならばコンテンツを配信するユーザが発生されるトラフィックを、コンテンツを視聴しているユーザが肩代わりすることになる。しかし、コンテンツを視聴がメインのユーザならば、ISPが規定して送信トラフィックを使い切れないだろう。それならば、自分が使い切れない送信トラフィックを「共有」した方が、コンテンツ送信者や他のユーザのためにもなる。それでも、自分の「送信トラフィック」が気になるユーザがいるのであれば、コンテンツ送信者は同じコンテンツでもサイズの「大きいもの」と「小さいもの」を用意しておき、小さい方は従来の方法で、大きい方はP2Pで配布すれば良い。

 帯域制限の問題ではファイル交換が「原因」となるが、必ずしもP2Pが悪者になるわけではない。帯域制限がかけられる今だからこそ、合法的なコンテンツ配信者にとっては有効な技術になっていくだろう。
by kozai22 | 2004-02-16 22:34 | P2P