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ダブルスラッシュに関連した雑記


by kozai22
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ISPが料金を支払うだけでは問題は解決しない

 ご存じの通りP2P技術を使ったファイル交換ソフトによって、ISPの上りトラフィックが圧迫されており、いくつかのISPは公式にファイル交換ソフトの制限に乗り出している。このファイル交換ソフトが引き起こす「帯域」の問題は日本だけでなく世界中で大問題になっており、ルータメーカもP2P技術を使ったファイル交換ソフトの帯域制御装置に注力した製品を販売しようとしている。これからもファイル交換ソフトの帯域制御に特化した製品の販売や、ISP側のファイル交換の抑制を発表する機会も増えていくだろう。

 しかし、ISPの中にはファイル交換を「抑制」するのではなく、むしろファイルを「拡散」させようとする動きがある。これはファイル交換で人気あるファイルキャッシュして、ネットワークのトラフィックを軽減しようというのだ。

 もちろん、この方法にはファイル交換とは切っても切れないもう一つの問題。すなわち「著作権」との問題が出てくる。ところがISPやファイル交換業者の中には「著作権」の問題も解決しようとしている団体がある。例えば、イギリスのISPの中にはレコード業界に対して音楽使用料を支払う代わりに、合意しているレコード会社の楽曲を自由に交換できる。

 ISPが利用者から料金を徴収しそれを著作権の業界団体に分配することでファイル交換自体を「合法」にしてしまえば、ファイル交換利用者は捕まらないし、著作権者に料金が支払われる、さらにネットワークの負荷も自分のネットワークにファイルをキャッシュできる。一見すると非常に良い案に見えるがこの方法を採用すると様々な問題が出てくる。

 まずは著作権者の1人々に正当な料金を払うのが難しい点があるということだ。広大なファイル交換網の中である特定の著作権者の作品が、どのくらい「流通」しているかを正確に特定するのは難しいのではないかと思う。そんな状況で著作権者1人々に正当な料金を払うのはさらに難しいだろう。

 2点目として、ファイル交換ネットワークで「流通」しているファイルは音楽ファイルだけではないということだ。ファイル交換ネットワークには映画やテレビを録画した動画データをはじめ、マンガや写真集をスキャンしたデータなど様々なデータが「流通」している。つまり、料金を支払うのは「音楽業界」だけではないということだ。当然ISP側が支払う料金もそれによって我々がISPに払う料金も増えていくだろう。また、著作権団体によってはファイル交換での「流通」をどうしても許さない所も出てくるだろう。そうなれば、どのデータがファイル交換が許されているかを利用者側で把握しなければならない。

 3点目として、もしファイル交換が完全に「合法」になってしまえば、ファイル交換を利用するユーザは一気に増大するだろう。そうなれば、今以上に上がりの送信トラフィックが増えることになる。現状でもISPによっては現状でも既に厳しいのに、今以上のトラフィックに耐えられるのか難しいところだろう。

 日本では、このような「ISPが著作権料を徴収する」という提案は出てきていないが、今後はこのような意見も出てくると思う。しかし、ISPが料金を支払うだけでは簡単には問題は解決しないだろう。

[参考リンク]

レコード業界に音楽使用料を支払う世界初のブロードバンドISPが英国に
impress
ISP加入者はPtoPサービス利用料を支払うべきか
CNET Japan
P2Pトラフィック軽減ソフトに「海賊行為関与」の懸念
ITmedia
by kozai22 | 2004-02-24 20:23 | P2P